偽装結婚~代理花嫁の恋~
第3章 ★ 衝撃 ★
由梨亜に接するときの彼から、真面目な会社員というのは到底、想像できなかったけれど、たった今、かいま見たばかりの三鷹なら、信じられるような気がする。いや会社員というよりは、どこかの企業のトップのような―。あのしゃべり方は普段から他人に命令することに慣れた者特有のものだ。幾ら英語であっても、言葉のトーンや響きから判る。
やはり、彼には何かしら秘密があるのだ。
もしかしたら、由梨亜に見せているお調子者で女タラシといういかにも遊び人風の顔は、ほんの見せかけ―素顔を隠すための仮面にすぎないのかもしれない。
由梨亜は初めて知った彼のもう一つの顔に少なからず衝撃を受けていた。
静かにリビングに戻り、最新型の大型液晶ワイドテレビのスイッチをオンにして、DVDに切り替える。家から持参した秘蔵の韓流ドラマ〝美男ですよ〟をデッキに入れた。
同時に再生が始まり、既に何十回と見慣れた画面が流れ始める。
どれくらい経っていたのだろう。
唐突に背後で男の声が響き、由梨亜は飛び上がった。
「こんなのが好きなの?」
「えっ」
思わず悲鳴のような声を上げると、三鷹が苦笑めいた笑みを刻んでいた。
「そんなに愕いた?」
「だって、後ろからいきなり話しかけるんだもの」
由梨亜が少し涙眼で訴えると、どれどれと三鷹が背後から身を乗り出してきた。
「うーん、なになに、韓流ドラマ、美男ですよ」
三鷹は笑いを含んだ声で言った。
「でも、もう肝心のドラマは終わっちゃってるけど?」
そこで、由梨亜はギョッとした。彼が何か話す度に、三鷹の吐息混じりのハスキーな声音が彼女の耳朶を掠めるのだ。彼の息はかすかに芳醇なワインとメンソールの香りがした。
「いやだわ、私ったら」
由梨亜は頬を赤らめた。
三鷹のことを考えていて、ドラマをろくに見ていなかった。知らない中にドラマはとっくに終わっていたようだ。
「昨夜から色々あったし、疲れてるみたい」
もう寝るわ。
そう言って立ち上がりかけた時、三鷹がソファの後ろを回って隣に座った。
やはり、彼には何かしら秘密があるのだ。
もしかしたら、由梨亜に見せているお調子者で女タラシといういかにも遊び人風の顔は、ほんの見せかけ―素顔を隠すための仮面にすぎないのかもしれない。
由梨亜は初めて知った彼のもう一つの顔に少なからず衝撃を受けていた。
静かにリビングに戻り、最新型の大型液晶ワイドテレビのスイッチをオンにして、DVDに切り替える。家から持参した秘蔵の韓流ドラマ〝美男ですよ〟をデッキに入れた。
同時に再生が始まり、既に何十回と見慣れた画面が流れ始める。
どれくらい経っていたのだろう。
唐突に背後で男の声が響き、由梨亜は飛び上がった。
「こんなのが好きなの?」
「えっ」
思わず悲鳴のような声を上げると、三鷹が苦笑めいた笑みを刻んでいた。
「そんなに愕いた?」
「だって、後ろからいきなり話しかけるんだもの」
由梨亜が少し涙眼で訴えると、どれどれと三鷹が背後から身を乗り出してきた。
「うーん、なになに、韓流ドラマ、美男ですよ」
三鷹は笑いを含んだ声で言った。
「でも、もう肝心のドラマは終わっちゃってるけど?」
そこで、由梨亜はギョッとした。彼が何か話す度に、三鷹の吐息混じりのハスキーな声音が彼女の耳朶を掠めるのだ。彼の息はかすかに芳醇なワインとメンソールの香りがした。
「いやだわ、私ったら」
由梨亜は頬を赤らめた。
三鷹のことを考えていて、ドラマをろくに見ていなかった。知らない中にドラマはとっくに終わっていたようだ。
「昨夜から色々あったし、疲れてるみたい」
もう寝るわ。
そう言って立ち上がりかけた時、三鷹がソファの後ろを回って隣に座った。