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偽装結婚~代理花嫁の恋~

第3章 ★ 衝撃 ★

 最後に言い訳のように消え入りそうな声で付け加えた。
「いけない娘(こ)だな、由梨亜ちゃんは」
 ふわりと身体が浮いたかと思うと、由梨亜は悲鳴を上げた。いつしか三鷹の逞しい腕に抱き上げられ、膝に乗せられていたのだ。
 しかも、今更だけれど、彼は風呂上がりなのか素肌にバスローブ一枚纏っただけの姿であった。
「お仕置きだ」
 ふいに唇を塞がれ、由梨亜は驚愕した。
「―」
 小さな手で懸命に三鷹の胸板を押すが、やはり先日と同じで微動だにしない。三鷹の舌が由梨亜の下唇をなぞる。
 その意味が判らず、由梨亜が茫然としていると、三鷹が優しく囁いた。
「口を開けて」
 更に愕いた由梨亜は烈しく首を振る。
「キスの仕方も知らないんだ」
 特に蔑みのこもった口調というよりは、むしろ愛おしむようなものだったのだが、由梨亜は侮辱された―と屈辱を感じた。
 二十七にもなって、キスの経験もないのかと嘲笑われているように思えたのだ。
「仕方ないな」
 三鷹が笑い、再び由梨亜を強く引き寄せ、唇を重ねてきた。
「う―」
 チャペルでの口づけはほんの一瞬、しかも掠める程度のものだった。あのときにしんと冷たかった男の唇は今、燃えるように熱かった。
 執拗な口づけは延々と続き、一旦離れたかと思うと角度を変えて唇を塞がれる。
 く、苦しい。
 由梨亜は眼に涙を滲ませて、もがいた。
 呼吸さえ奪うような烈しいキスの連続で、息ができなくなってしまった。
 最早、抗う気力も体力もなくなった由梨亜をそっとソファに横たえ、三鷹は再び覆い被さってくる。由梨亜はあまりの息苦しさに口は半開きになっていた。三鷹はそのわずかな隙間から舌を差し入れてきた。
「―!」
 由梨亜の眼が大きく見開かれた。
 抵抗はそれまで以上に激しくなり、ぐったりと横たわっていたのが嘘のようだ。陸に打ち上げられた魚のように華奢な身体が跳ねる度に、三鷹は無情にも上から体重をかけて抵抗を封じ込めた。

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