偽装結婚~代理花嫁の恋~
第4章 ★惹かれ合う心たち★
「そう、なのかい」
母は落胆を隠せないようである。
「私はてっきり―」
由梨亜は言いかけた母に覆い被せるように告げた。
「私、当分、結婚はしないつもりよ」
「無茶を言うものじゃない。私に何かあったら、お前が一人になってしまうじゃない」
「そんなことにはならないわ。お母さんはこれからも元気だし、私はずっとお母さんと一緒にいる。ただ、それだけ」
それじゃあ、行ってくるわね。
まだ何か言いたげな母を残し、由梨亜は逃げるように病室を後にした。
その日はコンビニのバイトも休みだ。別にこれといってすることはない。
由梨亜はひとまずマンションに戻ることにした。マンションに戻ると、男一人の住まいにしてはきちんと片付けられた内部を改めて見回した。
元々、三鷹は几帳面な性格なのだろう。もっとも、二週間に一度は家政婦が来ていたとは話していたが。その家政婦には由梨亜との〝結婚〟期間だけは来なくて良いと言い渡してあるという。
「家政婦なんて、贅沢よね」
由梨亜は腕まくりしながら、リビングを見回した。あまり必要はなさそうだけれど、掃除機くらいはかけておこうと思ったのだ。
しかし、広いとはいえ、部屋の一つ二つに掃除機をかける手間などたかが知れている。由梨亜が掃除したのは結局、リビングと自分の部屋だけだった。三鷹の寝室と仕事部屋はやはり私的な空間なので、彼の留守中に無断で入るのは躊躇われた。
更に風呂場まで磨き上げたが、それでも時間を持て余してしまった。風呂場も広さはさほどでもないが、なかなかのものだ。ゆったりとした浴槽はスイッチを押せば、ジャクジーにもなるし、まるで外国映画に出てくるホテルのお風呂のようなクラッシックで優雅な装飾が施されている。
風呂場を丹念に磨き上げた後はいよいよすることがなくて、いつのまにかリビングのソファで眠っていた。〝美男ですよ〟を観ていたはずなのに、大好きなパク・シネの〝ラブリー・デイ〟が子守歌代わりになってしまい、つい眠りの国にと誘われてしまったのだ。
母は落胆を隠せないようである。
「私はてっきり―」
由梨亜は言いかけた母に覆い被せるように告げた。
「私、当分、結婚はしないつもりよ」
「無茶を言うものじゃない。私に何かあったら、お前が一人になってしまうじゃない」
「そんなことにはならないわ。お母さんはこれからも元気だし、私はずっとお母さんと一緒にいる。ただ、それだけ」
それじゃあ、行ってくるわね。
まだ何か言いたげな母を残し、由梨亜は逃げるように病室を後にした。
その日はコンビニのバイトも休みだ。別にこれといってすることはない。
由梨亜はひとまずマンションに戻ることにした。マンションに戻ると、男一人の住まいにしてはきちんと片付けられた内部を改めて見回した。
元々、三鷹は几帳面な性格なのだろう。もっとも、二週間に一度は家政婦が来ていたとは話していたが。その家政婦には由梨亜との〝結婚〟期間だけは来なくて良いと言い渡してあるという。
「家政婦なんて、贅沢よね」
由梨亜は腕まくりしながら、リビングを見回した。あまり必要はなさそうだけれど、掃除機くらいはかけておこうと思ったのだ。
しかし、広いとはいえ、部屋の一つ二つに掃除機をかける手間などたかが知れている。由梨亜が掃除したのは結局、リビングと自分の部屋だけだった。三鷹の寝室と仕事部屋はやはり私的な空間なので、彼の留守中に無断で入るのは躊躇われた。
更に風呂場まで磨き上げたが、それでも時間を持て余してしまった。風呂場も広さはさほどでもないが、なかなかのものだ。ゆったりとした浴槽はスイッチを押せば、ジャクジーにもなるし、まるで外国映画に出てくるホテルのお風呂のようなクラッシックで優雅な装飾が施されている。
風呂場を丹念に磨き上げた後はいよいよすることがなくて、いつのまにかリビングのソファで眠っていた。〝美男ですよ〟を観ていたはずなのに、大好きなパク・シネの〝ラブリー・デイ〟が子守歌代わりになってしまい、つい眠りの国にと誘われてしまったのだ。