偽装結婚~代理花嫁の恋~
第4章 ★惹かれ合う心たち★
由梨亜は肩を竦めた。
「三鷹さん、S物産って会社は結構、封建主義がいまだにまかり通ってるんですよ。何しろ社長が頭の固いコチコチの頑固爺ィだもの。社長が一手に権力握ってたから、誰も逆らえない。元々、経費節減のために首切りを言い出したのも社長だし。そんな会社だから、女子社員なんて会社は結婚までの腰掛け、使い捨ての雑用係くらいにしか見てくれないの」
「理不尽な話だな」
三鷹が暗い声で呟く。
由梨亜は首を傾げた。
「でも、それが現実ですよ。私ね、会社をクビになってから、コンビニでバイト始めたの。本当はS物産からも近いし、昔の同僚に逢う機会はありすぎるから、避けたかった。でも、さっきも言ったように、失業中の身は職場を選んではいられないでしょう。だから、そこの店で即決したんです。仕事始めて三日目くらいだったかな、昔の同期の子が後輩たちとお弁当を買いにきて、ばったり。そのときに彼女に言われちゃった。もう少し踏ん張って会社に居座ってれば、首を斬られずに済んだのに、残念だったわねって」
三鷹は何も言わず、翳りを滲ませた端正な面をうつむかせている。
「嫌みったらしいなとは思ったけれど、彼女の言うことは正しいです。今は社長も実質的には引退したも同然で、アメリカから帰国したっていう若い副社長が采配ふってるでしょ。ミラクル・プリンスが帰ってきてから、首切りもなくなったし、経営も奇跡的に持ち直してきてるっていうじゃないですか。これからはS物産は昔よりは社内の雰囲気もマシになるでしょうね。少なくとも、女子社員をただの雑用係と見なすような風潮はなくなるんじゃないかな」
「由梨亜ちゃんは、これからどうするつもり?」
三鷹に思いつめたような眼で見つめられ、由梨亜は眼をまたたかせた。
「これから、ですか?」
少し考えた後、由梨亜はゆっくりと言葉を選びながら応えた。
「また次のちゃんとした仕事を探さなきゃ。いつまでもコンビニでバイトもないですしね。でもね、正直言うと、私は自分が何をしたいのかよく判らないの。二十七にもなって、身につけた技術一つあるわけではない。もし、そんな技術があれば、次の仕事も見つかりやすいんでしょうけど」
「三鷹さん、S物産って会社は結構、封建主義がいまだにまかり通ってるんですよ。何しろ社長が頭の固いコチコチの頑固爺ィだもの。社長が一手に権力握ってたから、誰も逆らえない。元々、経費節減のために首切りを言い出したのも社長だし。そんな会社だから、女子社員なんて会社は結婚までの腰掛け、使い捨ての雑用係くらいにしか見てくれないの」
「理不尽な話だな」
三鷹が暗い声で呟く。
由梨亜は首を傾げた。
「でも、それが現実ですよ。私ね、会社をクビになってから、コンビニでバイト始めたの。本当はS物産からも近いし、昔の同僚に逢う機会はありすぎるから、避けたかった。でも、さっきも言ったように、失業中の身は職場を選んではいられないでしょう。だから、そこの店で即決したんです。仕事始めて三日目くらいだったかな、昔の同期の子が後輩たちとお弁当を買いにきて、ばったり。そのときに彼女に言われちゃった。もう少し踏ん張って会社に居座ってれば、首を斬られずに済んだのに、残念だったわねって」
三鷹は何も言わず、翳りを滲ませた端正な面をうつむかせている。
「嫌みったらしいなとは思ったけれど、彼女の言うことは正しいです。今は社長も実質的には引退したも同然で、アメリカから帰国したっていう若い副社長が采配ふってるでしょ。ミラクル・プリンスが帰ってきてから、首切りもなくなったし、経営も奇跡的に持ち直してきてるっていうじゃないですか。これからはS物産は昔よりは社内の雰囲気もマシになるでしょうね。少なくとも、女子社員をただの雑用係と見なすような風潮はなくなるんじゃないかな」
「由梨亜ちゃんは、これからどうするつもり?」
三鷹に思いつめたような眼で見つめられ、由梨亜は眼をまたたかせた。
「これから、ですか?」
少し考えた後、由梨亜はゆっくりと言葉を選びながら応えた。
「また次のちゃんとした仕事を探さなきゃ。いつまでもコンビニでバイトもないですしね。でもね、正直言うと、私は自分が何をしたいのかよく判らないの。二十七にもなって、身につけた技術一つあるわけではない。もし、そんな技術があれば、次の仕事も見つかりやすいんでしょうけど」