偽装結婚~代理花嫁の恋~
第4章 ★惹かれ合う心たち★
「君は会社ではどの部署にいたの?」
「営業です。販促の担当を同僚と二人で組んでやってました」
「そう。君みたいな役に立つ社員をクビにするなんて、S物産は勿体ないことをしたな。先見性のある考えを持つっていうのは、簡単なようでなかなか難しいんだよ。ビジネスは常に市場がどう動いてゆくか―少し先を考えて方針を次々と打ち出していくものだから。君のようにまだ若いのに、先が読めて広い視野で全体を見ることのできる人間は実は会社にとって物凄く貴重な人材だ。もし俺がS物産の頑固爺ィだったら、君じゃなく、その人を見る眼のない人事部長を先にクビにする」
由梨亜は笑った。
「三鷹さん、S物産によほど恨みでもあるのね」
「由梨亜ちゃんが教えてくれた先ほどの対策案、会議にかけてみる必要がありそうだな」
三鷹が呟くのに、由梨亜は肩をすくめた。
「S物産の人事部に匿名で電話でもするつもりなの?」
「まあ、ね」
三鷹は曖昧に笑い、また表情を引き締めた。
「君は結婚とかは興味ないのかな」
「今のところ、ないですね。まだ自分のやりたいことも判らない状態なのに、結婚なんて考えられない。それに、結婚は相手がいなきゃできませんよ。今のところ、好きな男もいないし」
「そう? じゃあ、俺にもチャンスはある?」
勢い込んで言う三鷹を由梨亜は軽く睨んだ。
「またまた、そんなことを言う。からかい甲斐があるのかもしれないけど、良い加減にして。それよりも、三鷹さんは恋人はいるんでしょ」
言ってしまってから、自分の考えのなさに思い至った。
「あ、でも、彼女いたら、その女(ひと)を連れてきて結婚すれば良いだけだものね。私なんかを代役にするからには、三鷹さんも彼女はいないのかな」
慌てて言い足したものの、言えば言うほど墓穴を掘る形になってしまう。
三鷹がニヤリと笑った。
「図星だ。由梨亜ちゃんの言うとおり。これまでに付き合った女性は何人かはいたよ。でも、結婚まで考えたことは正直、一度もないんだ」
由梨亜はますます怖い顔になった。
「まさか、全部、遊びだったなんて言うんじゃないでしょうね」
「営業です。販促の担当を同僚と二人で組んでやってました」
「そう。君みたいな役に立つ社員をクビにするなんて、S物産は勿体ないことをしたな。先見性のある考えを持つっていうのは、簡単なようでなかなか難しいんだよ。ビジネスは常に市場がどう動いてゆくか―少し先を考えて方針を次々と打ち出していくものだから。君のようにまだ若いのに、先が読めて広い視野で全体を見ることのできる人間は実は会社にとって物凄く貴重な人材だ。もし俺がS物産の頑固爺ィだったら、君じゃなく、その人を見る眼のない人事部長を先にクビにする」
由梨亜は笑った。
「三鷹さん、S物産によほど恨みでもあるのね」
「由梨亜ちゃんが教えてくれた先ほどの対策案、会議にかけてみる必要がありそうだな」
三鷹が呟くのに、由梨亜は肩をすくめた。
「S物産の人事部に匿名で電話でもするつもりなの?」
「まあ、ね」
三鷹は曖昧に笑い、また表情を引き締めた。
「君は結婚とかは興味ないのかな」
「今のところ、ないですね。まだ自分のやりたいことも判らない状態なのに、結婚なんて考えられない。それに、結婚は相手がいなきゃできませんよ。今のところ、好きな男もいないし」
「そう? じゃあ、俺にもチャンスはある?」
勢い込んで言う三鷹を由梨亜は軽く睨んだ。
「またまた、そんなことを言う。からかい甲斐があるのかもしれないけど、良い加減にして。それよりも、三鷹さんは恋人はいるんでしょ」
言ってしまってから、自分の考えのなさに思い至った。
「あ、でも、彼女いたら、その女(ひと)を連れてきて結婚すれば良いだけだものね。私なんかを代役にするからには、三鷹さんも彼女はいないのかな」
慌てて言い足したものの、言えば言うほど墓穴を掘る形になってしまう。
三鷹がニヤリと笑った。
「図星だ。由梨亜ちゃんの言うとおり。これまでに付き合った女性は何人かはいたよ。でも、結婚まで考えたことは正直、一度もないんだ」
由梨亜はますます怖い顔になった。
「まさか、全部、遊びだったなんて言うんじゃないでしょうね」