偽装結婚~代理花嫁の恋~
第4章 ★惹かれ合う心たち★
大丈夫、由梨亜さえ誰にも話さず、見せなければ良い。この写真は一枚だけ、三鷹との幸せな結婚生活の想い出を偲ぶよすがとして大切にしまっておこう。きっと、一生の宝物になるだろう。
「うん? あ、こんな写真で良ければ、後でプリントしとくよ」
三鷹には〝こんな写真〟でしかなくとも、由梨亜には一生の記念になる宝物ほどの価値があるのだ。
由梨亜は微笑んだ。
「お願いね」
「さあ、ケーキ入刀も済んだし、これでやっと由梨亜ちゃんお手製のご馳走にありつける」
三鷹が心底嬉しげに言い、まずは眼の前にあったミートパイに手を伸ばした。
「すっかり冷めたわね。もう一度、温め直しましょうか?」
「いや、その必要はないよ。今夜の主役は由梨亜ちゃんなんだからね。今夜だけは後片付けは俺がやるし、もう、くつろいじゃってね」
三鷹は旺盛な食欲を見せて次々と料理を平らげている。これはいつものことだが、彼は本当によく食べた。均整の取れた引き締まった身体には贅肉も脂肪もついていないのに、あれだけ食べて太らないのが不思議に思えるほどだ。が、彼の食べっぷりは見ていて気持ちが良かったし、更には自分の手料理を食べる彼を見るのは嬉しかった。
まだ二十六だというから、若さのゆえもあるのだろう。
彼がすべて食べ終えた頃合いを見計らって、由梨亜はデザートのパンナコッタを出した。
「うん、美味い。最高」
由梨亜の前では調子の良い彼がいつもにも増して饒舌だ。
パンナコッタに銀の小さな匙を入れながら、三鷹が言った。
「子どもの頃、お袋がよくプリンを作ってくれたな。由梨亜ちゃんが作るパンナコッタって、あの頃に食べたプリンとそっくり同じ味だ」
三鷹は少し遠い眼になり、記憶をたぐり寄せるような表情をしていた。由梨亜の視線に気づくと、急におどけた表情になり、片目を瞑って見せる。
「うん? あ、こんな写真で良ければ、後でプリントしとくよ」
三鷹には〝こんな写真〟でしかなくとも、由梨亜には一生の記念になる宝物ほどの価値があるのだ。
由梨亜は微笑んだ。
「お願いね」
「さあ、ケーキ入刀も済んだし、これでやっと由梨亜ちゃんお手製のご馳走にありつける」
三鷹が心底嬉しげに言い、まずは眼の前にあったミートパイに手を伸ばした。
「すっかり冷めたわね。もう一度、温め直しましょうか?」
「いや、その必要はないよ。今夜の主役は由梨亜ちゃんなんだからね。今夜だけは後片付けは俺がやるし、もう、くつろいじゃってね」
三鷹は旺盛な食欲を見せて次々と料理を平らげている。これはいつものことだが、彼は本当によく食べた。均整の取れた引き締まった身体には贅肉も脂肪もついていないのに、あれだけ食べて太らないのが不思議に思えるほどだ。が、彼の食べっぷりは見ていて気持ちが良かったし、更には自分の手料理を食べる彼を見るのは嬉しかった。
まだ二十六だというから、若さのゆえもあるのだろう。
彼がすべて食べ終えた頃合いを見計らって、由梨亜はデザートのパンナコッタを出した。
「うん、美味い。最高」
由梨亜の前では調子の良い彼がいつもにも増して饒舌だ。
パンナコッタに銀の小さな匙を入れながら、三鷹が言った。
「子どもの頃、お袋がよくプリンを作ってくれたな。由梨亜ちゃんが作るパンナコッタって、あの頃に食べたプリンとそっくり同じ味だ」
三鷹は少し遠い眼になり、記憶をたぐり寄せるような表情をしていた。由梨亜の視線に気づくと、急におどけた表情になり、片目を瞑って見せる。