偽装結婚~代理花嫁の恋~
第2章 ★A women meets a man ★
★A women meets a man ★
鏡の中の自分はまるで別人だ。由梨亜は心もち小首を傾げ、気取って微笑んでみる。
純白のウェディングドレスは大胆に肩を見せるデザインで、スカートは長くトレーンを引いている。ふんわりと白い薔薇の花が開いたようなスカートは上にやはり白のチュールが何層にも重なっており、所々に真珠が縫い付けられていた。
素敵。
由梨亜はホテル専属のヘアメークの女性によって、まるで別人のように変身していた。短い髪はロングのウイッグで憧れのロングヘアに変わり、右横で一つに緩く編んだ髪にも小さな真珠が無数に飾られている。頭上に輝くのは品の良い繊細なティアラ。
私って、こんな眼が大きかったかしら?
いつもは細いと気にしている一重の眼が今日は二倍以上に大きく見えるのは、きっと特別な花嫁メークのせいに違いない。
こんなに綺麗にして貰えるのなら、模擬披露宴の花嫁役も悪いものではないかもしれない。
由梨亜は一週間前、面接を受けたときのことを思い出して、知らず顔を顰めていた。
あれから彼女はすぐにNホテルの担当者だという田中という人物に連絡を取った。翌日に面接を受けにいくと、ロビーで中年の男性が待ち受けていた。
中肉中背で至って平凡な印象を与える男ではあったが、お世辞にも愛想が良いとか感じが良いとはいえない。
相手は由梨亜をロビーの片隅にあるテーブル席に連れてゆき、向かい合う形で座った。
―Nホテル ブライダル企画担当 田中義之
差し出された名刺に印刷された文字を眺めていると、田中という男はさほど暑くもないのに、黒スーツのポケットから白いハンカチを取り出し、しきりに汗を拭った。
―当方としては、もう少し応募者を見込んでいたんですがねぇ。このご時世だからかどうか判らないんですが、応募者も少なくて。
田中氏によれば、新郎役には三人の応募があったようだが、肝心の新婦役は目下、由梨亜一人だという。
―仕方ないから、どこかのプロダクションに電話してプロのモデルさんでも頼もうかとまで考えていたんですけどね。
鏡の中の自分はまるで別人だ。由梨亜は心もち小首を傾げ、気取って微笑んでみる。
純白のウェディングドレスは大胆に肩を見せるデザインで、スカートは長くトレーンを引いている。ふんわりと白い薔薇の花が開いたようなスカートは上にやはり白のチュールが何層にも重なっており、所々に真珠が縫い付けられていた。
素敵。
由梨亜はホテル専属のヘアメークの女性によって、まるで別人のように変身していた。短い髪はロングのウイッグで憧れのロングヘアに変わり、右横で一つに緩く編んだ髪にも小さな真珠が無数に飾られている。頭上に輝くのは品の良い繊細なティアラ。
私って、こんな眼が大きかったかしら?
いつもは細いと気にしている一重の眼が今日は二倍以上に大きく見えるのは、きっと特別な花嫁メークのせいに違いない。
こんなに綺麗にして貰えるのなら、模擬披露宴の花嫁役も悪いものではないかもしれない。
由梨亜は一週間前、面接を受けたときのことを思い出して、知らず顔を顰めていた。
あれから彼女はすぐにNホテルの担当者だという田中という人物に連絡を取った。翌日に面接を受けにいくと、ロビーで中年の男性が待ち受けていた。
中肉中背で至って平凡な印象を与える男ではあったが、お世辞にも愛想が良いとか感じが良いとはいえない。
相手は由梨亜をロビーの片隅にあるテーブル席に連れてゆき、向かい合う形で座った。
―Nホテル ブライダル企画担当 田中義之
差し出された名刺に印刷された文字を眺めていると、田中という男はさほど暑くもないのに、黒スーツのポケットから白いハンカチを取り出し、しきりに汗を拭った。
―当方としては、もう少し応募者を見込んでいたんですがねぇ。このご時世だからかどうか判らないんですが、応募者も少なくて。
田中氏によれば、新郎役には三人の応募があったようだが、肝心の新婦役は目下、由梨亜一人だという。
―仕方ないから、どこかのプロダクションに電話してプロのモデルさんでも頼もうかとまで考えていたんですけどね。