テキストサイズ

偽装結婚~代理花嫁の恋~

第5章 ★ 逢瀬 ★

 でも、そんなところが良いんだ、特に泣き顔が最高に可愛い。
 三鷹は今度は由梨亜を赤面させることを堂々と言った。更に。
「だけどね、由梨亜ちゃん、俺がいちばん嬉しかったのは君があのドクターの前で俺を夫だと認めてくれたこと」
 と、由梨亜以外には聞き取れないような声で囁いた。由梨亜が安浦医師の前で〝主人〟と言ったのがよほど嬉しかったらしい。満面に笑みを湛えている三鷹に、由梨亜は叫んだ。
「もう、三鷹さんったら!」
 三鷹の笑い声が澄んだ雨上がりの空気に弾けた。
 由梨亜は三鷹の腕に手を添え、二人は何事もなかったかのように笑いさざめきながら人波に紛れた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ