偽装結婚~代理花嫁の恋~
第5章 ★ 逢瀬 ★
そう言うと、三鷹は嬉しげに笑った。
「さて、そろそろ一時間が来るな」
三鷹は腕時計を見ると、母親に話しかけた。
「芙美子さん、海風も冷たくなってきたし、そろそろ家に戻ろうか」
「オウチ、モドル。ウレシイ、モドル」
三鷹の母の表情がまたほんの少し明るくなる。
三鷹はやるせなさそうに言った。
「母にとっての家はもう、俺と暮らしていた場所じゃない。今はここが母の我が家で、面倒を見てくれる介護士さんやヘルパーさんが家族なんだ」
再び車椅子を押してクリニックに戻り、受付で戻ったことを告げる。すぐに奥から、あの体格の良い介護士が迎えにきた。
「広澤さん、今日は良かったわね~。息子さんと可愛い息子さんの彼女にまで逢えて」
介護士が優しく話しかけ、三鷹の母は嬉しげに繰り返した。
「ムスコ、ムスコのカノジョ、カワイイ、ユリア、オヨメサン」
三鷹の言うように、彼の母はすべてが理解できないというわけではないのだろう。乏しい反応からもそれは理解できた。
「あら、広澤さん。そのお嬢さんって、彼女じゃなくてお嫁さんなの?」
介護士が眼を丸くしている。
三鷹は少し照れたような表情で、嬉しげに頷いた。
「はい」
「まあ、それは知らなかったわ。隅に置けないのね。とにかく、おめでとう」
介護士は笑顔で由梨亜にも言った。
「また是非、お義母さんに逢いにきてあげて下さいね」
「はい」
由梨亜は素直に頷いた。
「じゃあ、芙美子さん。また来月、逢いにくるからね。それまで介護士さんの言うことをちゃんときいて、セーラちゃんと仲良くしてるんだよ?」
母親ではなく我が子に話しかける口調で言い、三鷹は母親の手を両手で包み込んだ。
「ちゃんと食うもの食って、元気でいてくれよな」
と、三鷹の母が突如として歌うように呟いた。
「セーラチャン、チガウ、コノコ、ユリアチャン」
「さて、そろそろ一時間が来るな」
三鷹は腕時計を見ると、母親に話しかけた。
「芙美子さん、海風も冷たくなってきたし、そろそろ家に戻ろうか」
「オウチ、モドル。ウレシイ、モドル」
三鷹の母の表情がまたほんの少し明るくなる。
三鷹はやるせなさそうに言った。
「母にとっての家はもう、俺と暮らしていた場所じゃない。今はここが母の我が家で、面倒を見てくれる介護士さんやヘルパーさんが家族なんだ」
再び車椅子を押してクリニックに戻り、受付で戻ったことを告げる。すぐに奥から、あの体格の良い介護士が迎えにきた。
「広澤さん、今日は良かったわね~。息子さんと可愛い息子さんの彼女にまで逢えて」
介護士が優しく話しかけ、三鷹の母は嬉しげに繰り返した。
「ムスコ、ムスコのカノジョ、カワイイ、ユリア、オヨメサン」
三鷹の言うように、彼の母はすべてが理解できないというわけではないのだろう。乏しい反応からもそれは理解できた。
「あら、広澤さん。そのお嬢さんって、彼女じゃなくてお嫁さんなの?」
介護士が眼を丸くしている。
三鷹は少し照れたような表情で、嬉しげに頷いた。
「はい」
「まあ、それは知らなかったわ。隅に置けないのね。とにかく、おめでとう」
介護士は笑顔で由梨亜にも言った。
「また是非、お義母さんに逢いにきてあげて下さいね」
「はい」
由梨亜は素直に頷いた。
「じゃあ、芙美子さん。また来月、逢いにくるからね。それまで介護士さんの言うことをちゃんときいて、セーラちゃんと仲良くしてるんだよ?」
母親ではなく我が子に話しかける口調で言い、三鷹は母親の手を両手で包み込んだ。
「ちゃんと食うもの食って、元気でいてくれよな」
と、三鷹の母が突如として歌うように呟いた。
「セーラチャン、チガウ、コノコ、ユリアチャン」