
なつのおと
第5章 ふたりがいた夏 前編
恐る恐るその小さな家に近づいてみる。
いつ人が現れても逃げれるように気を張りつめながら。
しかし近づくほどにその家には今人が住んでいるとは思えないような外見であることがわかった。
クリーム色を基調とした壁に所々レンガが埋め込まれて屋根は煙突付きの赤色、という絵本に出てくるような可愛らしい家だ。
しかしその壁のクリーム色はくすんでいて、右側の壁はびっしりとツタに覆われている。
アーチ型の窓は砂埃で曇っていて中を伺うことさえできない。
昔は可愛らしい家だったのだろうが、これじゃあまるでオバケかなんかが住んでる洋館だ。
