
なつのおと
第5章 ふたりがいた夏 前編
中は意外とお洒落で家の外側よりは綺麗だった。
ビクビクしながら家にはいる。
玄関というか靴を脱ぐ場所はなく、洋館のようだった。
外の壁と同じ、壁紙もクリーム色。
だが入ってくる光が開け放したドアだけなので奥の方は暗くて全く見えない。
目を凝らし手探りで前に進む。
ふいに顔に何か触れた。
「ぎゃあああっ」
なんだこれなんだこれなんだこれっ!
ふわふわもやもやしている物が顔に付着している。
顔を払うがなかなか感触が消えない。
得体の知れない物に俺は軽くパニックを起こしていた。
家を飛び出して必死に顔を拭う。
薄目を開けてみるとそれは蜘蛛の巣だった。
