
なつのおと
第5章 ふたりがいた夏 前編
「確かに。しかもあんま見えねーな」
カナタが持ってきた懐中電灯によってさっきよりはましだがそれでも家全体の雰囲気はわからない。
そのまま手探りで進むのもなんだか気が引けて立ち止まっていると、カナタは光をあちこちに向けながら何かを探して進んでいく。
「ちょっとお前!見えない内にあんまうろちょろすんなよ!もう少し目が慣れたら…」
「あ、あった!」
俺の注意を遮って嬉しそうな声が響く。
5メートル位離れた場所でカナタが懐中電灯を振って俺を呼んだ。
「何だよ、何があった?」
目を凝らして足元に危険が無いか注意しながら進む。
また蜘蛛の巣にひっかかるのも嫌だ。
