
なつのおと
第5章 ふたりがいた夏 前編
「この家にある窓、全部あけたら明るくなりそうじゃない?」
「確かに…でもこれずいぶん使われてないな。開くかな?」
こんなに埃まみれになるまで使われていなかった窓だ。
簡単に開くとは思わない。
「ちょっとシュン、僕の手んとこ照らして!」
ずいっと懐中電灯を押し付けられる。
ったく強引だな、
そう思いながらもカナタの手元に光をあてた。
「んー鍵はないっぽいなあ…」
その半アーチ状の窓をじっと見つめて窓の取っ手らしき場所に触れた。
俺は黙って光をあてながら見守っている。
