
なつのおと
第5章 ふたりがいた夏 前編
ほそっこい腕に筋が浮き上がってカナタの手に力がこもるのがわかった。
「…っ」
窓をじっと見るが全く動かない。
しばらくしてカナタが諦めたように手を離した。
「駄目だ、スッゴくかたい」
手首が痛くなったのかこきこきまわしている。
「それ押すんじゃなくて引くんじゃねーの?」
この家の突入時に学んだことだ。
あの衝撃は忘れない。
だけど彼はあっさり首を振った。
「それはないよ。ちょうつがいの付き方が押し窓だもん」
「なっ…」
こいつ、そんなとこまで見てたのか…!
名前しか知らない少年カナタ、侮れない。
