
なつのおと
第5章 ふたりがいた夏 前編
「あーわかったよ!じゃあ交代!かわれ!」
カナタの棒っきれみたいな腕よりは俺のほうが腕力もあると思う。
持っていた懐中電灯をカナタの腹に押しやって受け取らせる。
光に照らされた窓にゆっくり両手を当てた。
ザラッとした感触が手のひらに伝わる。
手が汚れるな、という思いが一瞬よぎるが気にしてられない。
この家のドアノブに手をかけたときのような感覚が蘇る。
ドキドキと期待。
「ほら、シュンだって開かないだろ?」
「ばーか。まだ力入れてないんだよ!せかすなよ」
グッと力を込めてみたがやはり窓はぴくりとも動かない。
…まあ予想通りだ。
