
なつのおと
第5章 ふたりがいた夏 前編
カナタの頭をよけてひょい、と顔を出すとそこには。
「ピ…ピアノっ?」
俺たちが開けた窓からの光に照らされて一台のピアノがそこに静かに佇んでいた。
「すごい…」
そのピアノは友達の家に良くあるような小さなものではなくて、絵に描かれてるような大きなピアノだ。
こういうの、なんていうんだっけなあ…
「グランドピアノだ…」
あ、そうそう!
グランドピアノ。
お父さんから聞いた覚えがある。
「すごい、な」
まるで夢見たいだ。
「ここに住んでた人、ピアノ弾いてたんだね」
「ああ」
