なつのおと
第5章 ふたりがいた夏 前編
「あれ、音出るのかなあ…」
俺も今あのピアノにふれたくてウズウズしている。
「なあ、弾いてみようぜ!」
「あっシュン!!」
少ない光を頼りにまっすぐピアノへと進んで行く。
色んなものに躓いたけれど俺はあのピアノしか見えていなかった。
まるで、引き寄せられるように。
近づいていくと、そのピアノはすごい埃をかぶっていてとてもさわれるようなものではなかった。
「シュン、ピアノは明日にしよう。ちゃんと雑巾とかふくものもってきて綺麗にしてから遊ぼう?」
「…カナタ、明日も来るの?」
目の前に現れた宝物にさわれないショックは大きかったが、そのカナタの言葉に気を取られた。
「え?当たり前じゃんか!こんな場所見つけたら来ないわけ行かないよ。シュンも来るでしょ?」
「ああ、もちろん」
そう俺が強く頷くとじゃあ、と言って笑顔になった。
「ここは俺たちの秘密基地だね」