なつのおと
第6章 ハナビが散る空
どくん、と心臓が嫌な感じに鳴った。
海斗…。
「おーい?ハル、置いて行くぞ」
10メートルくらい先で両手をぶんぶんと振る海斗はとてもさっきの発言をした人とは思えないくらい、あっけらかんとして馬鹿っぽい。
そんなに田中さんのこと好きなのか。
海斗の考えてることはさっぱりわからない。
人と深く関わらないようにしている俺だけど、海斗のことがわからないのはそのせいだけじゃないはずだ。
別に、今までならそれで良かったけどさ。
「莉穂、か…」
名前で呼ぶことに一瞬も躊躇わない、その重さを感じさせない海斗を見てからはなんとなく気になり始めていた。