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なつのおと

第2章 夏のはじまり





田中さんの表情は、さっきと変わらないように見えるがピアノの前の方がよっぽど生きてて人間的だ。



白いポロシャツからすっと伸びた腕がしなやかに動いて、長い指が鍵盤を撫でるように移動する。




ああ、本当に田中さんが弾いてるんだ。


今、目の前で弾いてるんだ。



よくわかんないけど改めて実感してしまった。




メロディーから短調の色が消えて完全に明るくなる。



またゾワゾワっと鳥肌が立った。


広がっていく。



遠くに。


遠くに。



そして、唐突に音が途切れた。


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