テキストサイズ

鬼畜の復讐2

第26章 敗北

踏みつけを解いた拓真はにやけながら、隆一郎を見下ろす。

あゆみは土下座したまま。
それが、拓真にはきにいらなかった。
「(あゆみ…どうやって嬲ってやろうか…)」

「謝って済む話しでないことはわかっている…」
「ふん、当然だ…」

隆一郎は持参した小切手を差し出した。
「これは俺の誠意…」
「何が誠意だ?親父に泣きついただけだろうが!」
差し出された小切手を毟り取る。
「こんなカネ……!!?なっ!?」
小切手の額面を見て驚愕する拓真。
「えぇっ!?ご、五億円!?う、嘘!」
そう叫んだのは真由子。
拓真の表情が変わる。
「勿論、俺の父に借りたカネだ…それはうけとってくれ…」
「(ぐぅ…こいつ…)」
「あんたのお父様も中々の太っ腹ね…」
「二階堂…それでも俺のしたことは許されない…お前が、死ねというなら、死んで詫びる…」
「何!?」
拓真に嫌な予感が走る。
「警察に行けというなら、行こう…お前の好きにしてもらって構わない…」
「貴様…今の…これからの地位や名誉…権力…全て捨てるというのか!」
「その通りだ…覚悟はできている」
「(ぐぅ…バカな…そんな…)」
「あーら、随分謙虚じゃない?ね?拓真。お望み通り…」
「黙ってろ!真由子!」
拓真がイラついたように怒鳴り付ける。
「拓真…?」
「あゆみは…貴様が俺の全てを奪ってまで手に入れたこのオンナはどうするんだ」
「あゆみとは別れる…彼女には元々関係がない…被害者だからな…」
「貴様…」
「拓真…私は夫を…隆一郎を愛しています…初めは…この人が首相の息子で…実家を助けてくれるというからいっしょになったわ…あなたの言う通り、彼に溺れてしまった…贅沢な暮らしにも負けたわ…でも、彼は…夫は私を真剣に愛してくれたわ…私は夫についていきます…拓真がこの人に死ねというなら、私も死にます」
拓真の心に、敗北感が漂ってくる…
「夫が社会的地位を無くしても、私はついていきます」
「(こいつら…本気だ…この金額も…これ以上出さない…終わりにしろっていう…隆一郎…いや、中山儀一のいわば脅し…くそっ!)」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ