テキストサイズ

A fin-de-siecle angel

第1章 A

「ナイナイ、検査薬買う金あったらクリーム買ってるし(笑)」


高校時代の腐れ縁は切っても切れず。
この中途半端に出会い中途半端に関係を引きずっているこの女、付き合っていて特にメリットはないが、嫌いではない。



「あんさ、あたしあんたに渡したべ!?成分一覧表!!!」


「やっだ~いきなりまた酔ったフリしないでよ~あたしはね、純に見てもらうのが価値があるって思うのよ?ホラ、時間も早く済むし」
「帰る」



スッと白魚の様に伸びた5本の指につかまれ5つの薄紅色の貝殻が薄いコートに思いっきり食い込んだ。
酔ってんのはおまえだろと言う暇もつくらせず私はもとの場所に連れ戻される。



ピンクのトレンチコートの女は自分によく似た淡いピンクのチューブを手に取りはいとこちらに渡す。

やはり似た者は似た者を選ぶのかと思いつつ、表示成分を見る。


「うん、防腐剤、界面活性剤、やや発ガン成分2種類、アルコールで結局水分飛ぶし、うん。買う価値ないね。」


「うそ~だって1400円もすんだよー?」

「じゃ買えば?」


「嫌だーデザインが良好かつ成分がいいのじゃないと絶対買わない」


こんな所じゃ買えないよといいたかったが(言ってやりたかったが)やめた。デザインが良好かつ成分が良いチューブ野郎1つも安心かつ安全に買えないこのご時世への抵抗という事にしておこう。

ただ、綺麗な白魚の様な手に、合成着色料で淡く色づいた某、大手化粧品メーカーの1400円のクリームがのっかってる所を想像したら、少しゾクッとした。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ