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A fin-de-siecle angel

第1章 A

10時58分、

そろそろここ閉まるぞと裕美にツッコミを入れる10秒前に彼女は
「やっぱり手も顔と同じだよね」

とか言い出し走り去った。

イロトリドリでも中身がないと見捨てられんのかと少し悟った頃、彼女は少し地味な風貌の子をレジに通していた。

なんだ一人で選べんじゃんと思いつつなんだかかわいそうにも思った。


結局裕美を最後まで待った。二人で閉店ガラガラならぬギリギリまで待った。待たされたのだ。



「この美容液いいかなー」

と誇らしげに話す彼女。


そういえば今日は寒かった。9月中旬なのに何でだろう。

隣の方、カワイイコート、羽織れてラッキーとか思ってそう。


「そういえばさぁ…アタシ純にずっと聞きたい事あったんだよね」


と、少し歩き疲れて「足がイテェ」と自分を対話してた頃、私話しかける友人。

少し彼女の方を向き目を大きく見開き顔を下に下げた。


「純って、しあわせ?」


指を唇にまとわりつかせて節目がちでこういった。


「幸せだよ」


って、指一本唇ナンカに触れず、笑顔で答えられる私はなんだか…


「幸せ?」


「幸せだよぉ?」


「あたしは幸せじゃないかもー」


「そうだね、薬事法が改正されてなかったら今より少し幸せだったかもね」

知らぬが仏って言うし。


あ、たしかにとニヒルな顔をしているこの女が一体どんな人間なのかは未だに私も分からない。



このこと出会ってから、なんだろな、深い悩みを相談したり
「泣きたくなったら俺(あたし?)の胸を貸してやるよ」
なんていう友情ごっこは一切なかった。


「てか、なんでアンタ9月にクリーム買おうとしたんよ」


と、何故かとっさにいいたくなったから言った。もちろん、彼女は10分くらいかけてそれを丁寧に説明して下さった。

最後にやっぱり

「幸せになりたいなー」


とつぶやいた。

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