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A fin-de-siecle angel

第1章 A

話を聞くかぎり、普通の私立大を卒業し、アパレル業といういかにも平均的な幸せを手にしている彼女も、過去にレイプとかされててなにかデカイ傷を抱えているとしたら。

もしも、二重人格かなんかで、ある日、あの漫画みたいにドラマディックな演出と供にそれをポロっと出したら。


「あー、面白ろいねー」


「純は人の不幸は蜜の味かぁ(笑)」


私は今までに感情を人にぶつけたり漫画の様にドラマティック(笑)に人に依存した事がない。人間生きてりゃ街中をやつれた顔で平然と歩いてる連中でもそんな事があるらしいのだが、あたしはないー。




所謂才能だ。





そうだ、この女は放っておこう。もうちょっとだけ、傍に置いて観察しようよ純。
そうしよう。そうしよう。



「あたしね、明日からもっと幸せになるんだ。」



ツカツカと、履き慣れたハイヒールを鳴らしながら、「とりあえずまたね。」と心の中で呟き、突き当たりの角で裕美から離れた。なにも言わず。


秋の風が、歩くたび丁度肩までの髪になびいて気持ち良かった。

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