狼さんの腕のなか
第5章 彼の秘密
「あれ?由紀斗くん?」
今の俺というか、最近の俺は
機嫌が悪い・・・
別に誰が悪いって訳じゃない
体質の問題
だから、ケガしたのか知らねーけど
俺に話しかけるこいつを
軽くあしらうつもりだったのに
「体調でも悪いの?」
ドアを閉めて中に入ってくると
部屋中に甘い香りが広がる
体中が熱くなるのを感じる
でも、なんでだ?
「あたしはね、グラスの破片
拾ってて切っちゃったの」
そう言って見せられた
血が少し流れている指先を見て
納得する
「絆創膏とかあるかな?」
やめろ、近付くな・・・
「ハァッ・・・」
「由紀斗くん・・・?」
美琴が近付くたび、
俺をおかしくする甘い香りが
全身をまとうように鼻をかすめる
「ハァッ・・・・ハァッ・・・・」
「大丈夫!?熱っぽいよ?」
その場に崩れる俺を支えるように
触れてくる