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神さま、あと三日だけ時間をください。

第1章 ♭眠れぬ夜♭

 周囲からせっつかれるのを嘆いていたはずの皐月だけれど、三人の子の母となった今は、とうにそんな頃の気持ちは忘れているのだろう。
 美海はカーソルを動かし、何か割り切れない気持ちのまま、その画像をゴミ箱に移動させた。最初の頃は、親友の大切な子どもたちの写真を棄てるのは忍びなかったし、たとえ相手が知らないとしても、後ろめたい気持ちになった。
 友の幸福を素直に歓べない自分の心が狭いのかと自己嫌悪に陥った。しかし、毎日のように届く画像付きメールも保管場所に困るし、正直、美海がどれだけ子どもを望んでいたか知っている癖に、こんな無神経なことをする皐月の無神経さに愛想が尽きかけてもいた。
―春紀クンも元気そうね。また今度、お誕生日プレゼントを贈るわ。      美海
 とりあえず返信を返し、今度はネットめぐりを始めた。これは、いつもやっていることだ。特に趣味も特技もない美海は、こうやって夜にはパソコンを眺めていることが多い。
 まだしも趣味でもあれば、こうまで子どものいない淋しさを持て余すこともなかっただろうにと思わないでもない。だから、これまでにもパン作り教室、着付け教室と色々なカルチャースクールに参加したのだが、どれも長続きはしなかった。
 琢郎に言わせれば、
―お前は忍耐と努力が足りないんだ。
 ということらしい。
 しかし、美海は大学を卒業してから、市内では有名なデパートに六年間勤務した経験もある。その間、上司の受けもそれなりに良かったし、勤務態度や能力も評価されていた。けして夫の言うように、自分が劣っているとは思わない。
 とりとめもない物想いに浸りながら、あちこちのサイトを巡っている中に、いきなり画面が変わった。
「やだ、何、これ」
 グーグルの検索画面を出していたはずなのに、いつのまにか変わっている。どこをどうクリックして、こんなところに辿り着いてしまったのだろう。訳もなく手を動かしてクリックを続けていたら、この体たらくである。
 美海は眉を顰めた。今、眼の前にひろがっているのは出会い系サイトだ。

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