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神さま、あと三日だけ時間をください。

第3章 ♭ミュウとシュン~MailsⅡ~♭

 琢郎は少し皮肉っぽい口調で言い、部屋に入ってきた。廊下の方からではなく、居間から続き部屋になっている方のドアを押して入ってきたらしい。
 シュンと急接近しているのにひきかえ、肝心の夫とはますます距離が開きつつある。もっとも、琢郎の方は最近、美海に何か話したそうなそぶりを見せることがあるのだけれど、美海の方が琢郎を避けているようなところがあった。
 やはり、シュンと毎夜、こうしてメール交換をしていること、琢郎に内緒で逢ったことについては後ろめたさを感じてないはずがない。それらがして、美海を琢郎から遠ざける原因になっていた。
 美海はさりげなく二つ折りの携帯を閉じた。なるたけ琢郎の眼に入らないようにデスクの下に隠し、握りしめる。
「何をしてたんだ?」
「え?」
 美海は突然の問いに窮した。
「あ、あの、ブログでも始めようかなと思って、色々と適当なサイトを調べてたの」
 慌てて適当に言いつくろってみたが、かえって墓穴を掘ることになった。
「携帯で?」
「ううん、パソコンで」
 咄嗟に応えるも、蒸し暑い夏の夜なのに、冷や汗が背中をつたい落ちるのが判った。
「でも、お前、パソコンは電源を落としてるじゃないか」
「あ―」
 美海は狼狽え、訳もなく立ち上がった。その拍子に膝の上で握りしめていた携帯が勢いよくすべり落ち、フローリングの床に音を立てて落ちた。
「そ、そうね。つい、さっき、電源を落としたのよ」
「そうか」
 琢郎はそれ以上、追及はしない。思わず身体中に漲っていた緊張が解けていった。
 わずかに気まずさを孕んだ沈黙が部屋を満たしてゆく。
 その時、淀んだ室内の空気をつんざくように、美海の携帯が鳴り始めた。
「電話だぞ」
「ううん、これはメール」
 美海はしゃがみ込んで携帯を拾った。ユーミンの〝雨の街を〟が流れている。お気に入りの曲を着信音にしているのだ。
「何だ、メールか」

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