
神さま、あと三日だけ時間をください。
第3章 ♭ミュウとシュン~MailsⅡ~♭
良かった、やっと繋がった! 昨夜はホント、心配したんだよ。でも、ミュウの無事が判ったんで、安心した。もちろん、俺は逢うのは全然構わないけど、ミュウはこんな時間に良いの? シュン
美海はシュンにこれから始発の電車に乗るとだけ返信して、携帯を閉じた。
とにかく今は一刻も早くここから逃げ出したかった。琢郎との烈しい夜の名残をそここに残した、この濃密な空気の立ちこめた部屋から出られさえすれば良かった。
美海は寝乱れたダブルベッドから厭わしいものでも見るかのように眼を背け、急いで寝室を出た。
美海が駅に降り立った時、シュンは既にプラットフォームに立って待っていた。
夏の朝が明けるのは早い。太陽が今日もまた、梅雨明けまもない上天気を約束している。
今日もプラットフォームからは雄大な海が見渡せる。朝陽が真っすぐに海面に降り注ぎ、今日はサファイアブルーに見える海は宝石のようにきらめいていた。
「ごめんなさい」
電車から降りるなり、美海は謝った。
三両編成の小豆色の列車は玩具のようにガタゴトと走り去ってゆく。次第に遠ざかってゆく列車を見送りながら、シュンが首を振った。
「俺は良いんだ」
この駅で降りたのは、美海の他には背中に小さな風呂敷包みを背負った老婆一人だけだった。小柄な老婆は腰を折り曲げるようにして、ゆっくりと二人の側を通り過ぎてゆく。
シュンの顔を見るなり、美海の中で張りつめていたものが一挙に崩れた。
「シュンさん―」
透明な涙が溢れ出し、つうっと頬をつたい落ちる。
「どうしたんだ、何があったの?」
シュンが気遣わしげに美海の顔を覗き込んでくる。と、シュンの視線が胸許に注がれているのに気づいた。マンションを出るときに着ていたのは丈の長いマキシワンピースだ。夏らしい鮮やかな大輪の花が白地に幾つも散った柄である。一面の蒼い花はまさに輝く海の色をそのま映し出したようだ。
肩が剥き出しになるのは避けたかったので、白いレースの袖付きボレロを羽織ったのだけれど、胸許はやはりブラウスやTシャツを着たときよりは露出度は高い。
