
神さま、あと三日だけ時間をください。
第3章 ♭ミュウとシュン~MailsⅡ~♭
「俺は甘いのは苦手でさ、市販の甘ったるいコーヒーは絶対、駄目」
シュンはしばらく黙ってコーヒーを啜っていた。ふとカップをテーブルに置いた。視線は半分ほどになったカップに落としている。
「君は一体、どこの誰なの?」
刹那、美海は鋭く息を呑んだ。シュンから放たれた問いかけだけが、真っすぐ矢のように心を射貫く。
「いつか訊かなくてはならないと思っていたんんだけどね」
「あの、私―」
美海は言いかけて、言葉を飲み込む。
シュンにしてみれば、当然の疑問だ。むしろ、遅すぎた感がある。普通なら、もっと早い段階でなされているべきはずの質問なのだから。
これは一つのチャンスであった。今なら、すべてを洗いざらい話し、これきりにできる。
美海が元いた世界へ―若い男との束の間の夢の世界から抜けだし、穏やかだけれど、退屈極まりない日常へと戻る絶好の機会ではないか。
「ごめんなさい、シュンさん。私は」
覚悟を決めて口をひらいたまさにその時、何を思ったのか、シュンが遮るように言った。
「言いたくないんだね。ごめん。もう謝らなくて良いよ。俺は別に無理に訊きだそうとは思ってないから」
少し意表をつかれ、美海は眼を瞠った。
「何か食べる?」
美海は力ない笑みを浮かべた。
「本当に食欲がないの。何も食べられそうにない」
シュンが形の良い眉をかすかに顰めた・
「ちょっとよく顔見せて」
まじまじと見つめていたかと思うと、小首を傾げた。
「この間逢ったときよりも痩せてない?」
美海は少し笑った。
「鋭いのね。確かに、ちょっとだけ痩せたの」
七月最初の日曜、シュンと逢ってから二週間が経っている。その間に、美海は三キロ痩せた。
「駄目だよ。それでなくてもこの殺人的な暑さだもの、食べたくなくても食べなくちゃ。待ってて、今、雑炊でも作るから」
美海が止めるまもなく、シュンは立ち上がった。流し台に向かい、何やらやっている。しばらく経った頃、湯気の立つ小鍋を持ち、シュンが戻ってきた。
シュンはしばらく黙ってコーヒーを啜っていた。ふとカップをテーブルに置いた。視線は半分ほどになったカップに落としている。
「君は一体、どこの誰なの?」
刹那、美海は鋭く息を呑んだ。シュンから放たれた問いかけだけが、真っすぐ矢のように心を射貫く。
「いつか訊かなくてはならないと思っていたんんだけどね」
「あの、私―」
美海は言いかけて、言葉を飲み込む。
シュンにしてみれば、当然の疑問だ。むしろ、遅すぎた感がある。普通なら、もっと早い段階でなされているべきはずの質問なのだから。
これは一つのチャンスであった。今なら、すべてを洗いざらい話し、これきりにできる。
美海が元いた世界へ―若い男との束の間の夢の世界から抜けだし、穏やかだけれど、退屈極まりない日常へと戻る絶好の機会ではないか。
「ごめんなさい、シュンさん。私は」
覚悟を決めて口をひらいたまさにその時、何を思ったのか、シュンが遮るように言った。
「言いたくないんだね。ごめん。もう謝らなくて良いよ。俺は別に無理に訊きだそうとは思ってないから」
少し意表をつかれ、美海は眼を瞠った。
「何か食べる?」
美海は力ない笑みを浮かべた。
「本当に食欲がないの。何も食べられそうにない」
シュンが形の良い眉をかすかに顰めた・
「ちょっとよく顔見せて」
まじまじと見つめていたかと思うと、小首を傾げた。
「この間逢ったときよりも痩せてない?」
美海は少し笑った。
「鋭いのね。確かに、ちょっとだけ痩せたの」
七月最初の日曜、シュンと逢ってから二週間が経っている。その間に、美海は三キロ痩せた。
「駄目だよ。それでなくてもこの殺人的な暑さだもの、食べたくなくても食べなくちゃ。待ってて、今、雑炊でも作るから」
美海が止めるまもなく、シュンは立ち上がった。流し台に向かい、何やらやっている。しばらく経った頃、湯気の立つ小鍋を持ち、シュンが戻ってきた。
