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神さま、あと三日だけ時間をください。

第3章 ♭ミュウとシュン~MailsⅡ~♭

 もしかして?
 ふいに甘い予感に胸が疼いた。
 シュンの顔はいっそう近づき、ふいに唇が美海のすべらかな頬に触れた。
 軽い落胆が美海の中をよぎる。
 私ったら、何を期待していたというの?
 まさかシュンがこんなオバさんにキスを仕掛けてくるとでも思ったのか? だが、恥ずかしいことに、そのとおりだった。
 美海の中でめまぐるしくせめぎ合う想いなど知らぬげに、シュンは唇を離す。かと思ったら、再び彼の唇が頬に触れ、そのままゆっくりと頬を降りていった。
 ゆっくりとさまよっていた唇でふいに唇を塞がれる。
「―!」
 それが何を意味するのかをはっきり自覚した刹那、美海の白い頬が染まった。 
「キスのときは眼を閉じて、ミュウ」
 美海の頬が更に上気する。
 しっとりとした唇が軽く唇をなぞる。―かと思ったら、次の瞬間には荒々しく押しつけられてくる。軽く舌が差しいれられ、美海はおずおずとその舌に自分のを絡めた。それを待っていたかのように、シュンが積極的になる。
 舌と舌を絡め合うという行為は何故か、密度の濃いセックスそのもののようだ。二人はいつまでも熱心に舌を絡め合い、情熱的な口づけを続けた。
 どれだけの時間が流れたのか。美海にとっては永遠にも思える時間だったけれど、現実にはそう長いものではなかったはずだ。
 漸くシュンが美海を解放した時、美海は呼吸も上がり、心臓は自分でも愕くほど動悸を打っていた。
 身体が火照ったように熱いのは、何も室内の冷房が殆ど効いていないからだけではない。シュンが―眼の前のこの青年が美海の身体と心に火をつけたのだ。 
「ミュウって、ホントに可愛い」
 シュンが蕩けるような顔で美海を見つめている。何が可愛いのか良く判らず、美海は眼を見開いてシュンを見つめた。
「キスの仕方もあまり知らないんだ?」
 三十九歳にもなって言われる場合、あまり褒め言葉にはならない科白だ。
 美海の眼にじんわりと涙が滲んだ。
 きっとシュンは今のキスでがっかりしたに違いない。自分より幾つも年上の癖に、ろくに経験も積んでいない女だと呆れたのかもしれない。

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