神さま、あと三日だけ時間をください。
第3章 ♭ミュウとシュン~MailsⅡ~♭
話はまだ日本が〝古事記〟に登場するような神話時代にまで遡る。二人の男神(おがみ)が美しい女神を相争った。女神はどちらの雄々しい男神をも愛していて、どちらか一人に決められなかった。
そんな時、二人の男神が女神に妻問いした。求婚された女神は絶望の果てに、海に身を投げて死んだ。愛する女が自分たちのせいで死んだことを嘆き哀しんだ男神たちもまた恋人の後を追うように身を投げて死んだ。
「その海に消えた三人の神たちが岩となったのだと伝えられているんだ」
シュンはそう話を締めくくった。
切別という地名は、そこから来ているらしい。
「哀しい話ね」
美海は遠い神世の昔、繰り広げられた壮絶な愛の闘いに想いを馳せた。二人の男神のどちらをも選べなかった女神の哀しみ、自分たちの烈しすぎる愛が愛する女神を死なせてしまったのだという男神たちの嘆き。
胸が切なくなるような話だ。
美海が黙り込んだのを見、シュンは心配そうに言った。
「この駅名をミュウが気に入っているみたいだったから、俺も話そうかどうか迷ったんだ。やっぱり、言わない方が良かったかも」
シュンは午後の陽射しを反射する海を眩しげに眺めている。
「実際、切別っていう地名が縁起悪いっていうんで、恋人たちには敬遠されている駅なんだ。M町も遊泳禁止になるほどキレイな海があるんだし、何とか観光地としてもっと集客できないかなと躍起になってるんだけどね。この切別岬の伝説が有名なだけに、かえって邪魔になってるというのが皮肉な現状さ」
その話は何故か、美海の心に礫(つぶて)のように投げ入れられ、深く深く沈んでいった。
何故か不吉な予感がしてならなかった。
シュンと自分もいずれは切別岬の男神と女神たちのように、儚く別れるしかないのだろうか?
想いに浸っている美海の耳をシュンの声が打つ。
「今度の土曜日、I町に行かないか?」
美海はふいに飛び込んできた言葉に、現実に引き戻される。
コンドノドヨウビ、アイマチニイカナイカ?
まるで、その言葉だけが見知らぬ異国の言葉のように非現実的な響きを伴って聞こえた。
そんな時、二人の男神が女神に妻問いした。求婚された女神は絶望の果てに、海に身を投げて死んだ。愛する女が自分たちのせいで死んだことを嘆き哀しんだ男神たちもまた恋人の後を追うように身を投げて死んだ。
「その海に消えた三人の神たちが岩となったのだと伝えられているんだ」
シュンはそう話を締めくくった。
切別という地名は、そこから来ているらしい。
「哀しい話ね」
美海は遠い神世の昔、繰り広げられた壮絶な愛の闘いに想いを馳せた。二人の男神のどちらをも選べなかった女神の哀しみ、自分たちの烈しすぎる愛が愛する女神を死なせてしまったのだという男神たちの嘆き。
胸が切なくなるような話だ。
美海が黙り込んだのを見、シュンは心配そうに言った。
「この駅名をミュウが気に入っているみたいだったから、俺も話そうかどうか迷ったんだ。やっぱり、言わない方が良かったかも」
シュンは午後の陽射しを反射する海を眩しげに眺めている。
「実際、切別っていう地名が縁起悪いっていうんで、恋人たちには敬遠されている駅なんだ。M町も遊泳禁止になるほどキレイな海があるんだし、何とか観光地としてもっと集客できないかなと躍起になってるんだけどね。この切別岬の伝説が有名なだけに、かえって邪魔になってるというのが皮肉な現状さ」
その話は何故か、美海の心に礫(つぶて)のように投げ入れられ、深く深く沈んでいった。
何故か不吉な予感がしてならなかった。
シュンと自分もいずれは切別岬の男神と女神たちのように、儚く別れるしかないのだろうか?
想いに浸っている美海の耳をシュンの声が打つ。
「今度の土曜日、I町に行かないか?」
美海はふいに飛び込んできた言葉に、現実に引き戻される。
コンドノドヨウビ、アイマチニイカナイカ?
まるで、その言葉だけが見知らぬ異国の言葉のように非現実的な響きを伴って聞こえた。