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神さま、あと三日だけ時間をください。

第4章 ♭切ない別れ♭

 ドライブは楽しかった。シュンはエスコート上手で、いつもさりげなく気を遣ってくれる。いつも気ままな琢郎の後を必死で追いかけているばかりだった美海には、これも新鮮な体験であり愕きであった。
 M町を抜けて二時間が経った頃、やっとI町に到着する。I町は近代的な都会の顔と古くからの門前町という全くあい反する面を有している。歴史のある名刹、古刹が多く落ち着いた佇まい見せる一角がある一方、近代的な遊園地やテーマパークが建設され、多くの観光客を集めていた。
 シュンの提案で、今日はまず遊園地を訪ねることになった。既に夕方になっており、小さな子ども連れなどは早々に帰り支度を始めている。この遊園地はナイトタイムも営業しているので、シュンはゆっくり愉しもうと言った。
 最初にこの遊園地呼び物のジェットコースター、その名もスーパージェットに乗った。人口の洞窟幾つもを通り抜け、更に高みから降りてきて、最後は巨大プールに突っ込むという趣向である。
 五両あるジェットコースターの殆どが埋まっていて、美海とシュンは一号車の最前列だ。
「ねえ、ちょっと。私たち、いちばん前よ。ちょっとヤバくない?」
 担当の係員に安全ベルトを装着して貰ってから、美海が隣のシュンに小声で囁いた。
「大丈夫だって。こんなの、たいしたことないさ」
 シュンは事もなげに言っていたのだが―。
 次の瞬間、ブザーと共にジェットコースターが動き出した途端、急に無口になった。更に一つ目の洞窟を抜け、二つ目の洞窟に入った頃には顔面蒼白になっている。
「大丈夫? 顔色が悪いわよ?」
「大丈夫だよ」
 口ではそう言いながらも、シュンはどんどん蒼褪めてゆく。流石に美海が本気で心配し始めた時、ついにジェットコースターは地上をはるかに見下ろす最上段まで上り詰めた。
「これからが本番よ」
 実は美海はジェットコースターが大好きなのだ。高いところから一挙に落ちていくあの独特のスリルというか感覚が堪らない。
 美海がわくわくしながら言っても、隣からは返事がない。怪訝に思って振り返ると、シュンはもう真っ青で震えていた。
「白状するわ。俺、高いところがてんで駄目なんだ」

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