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神さま、あと三日だけ時間をください。

第4章 ♭切ない別れ♭

 最悪の場合、自ら生命を絶つことになっても、シュンに身体を投げ出すことはできない。今なら、美海は切別伝説の女神の気持ちが判るような気がする。
 どちらも選べなくて、自ら生命を絶った女神は、きっと自分亡き後も、二人の男神がつつがなく過ごしてゆくことを何より望んだのだろう。もっとも、女神亡き後、男神たちが哀しみのあまり、女神の後を追うとまでは想像だにしなかっただろうけれど。
 琢郎もシュンも不幸にはできない。自分のせいで、彼等を哀しい運命に引き込むことはできないのだ。
 しかし、美海には大きな誤算があった。男と女の力では、所詮、女の方がはるかに不利なのだ。
「ミュウ、愛してる。判ってくれ」
 シュンの口づけが首筋に降るように落ちてくる。若さゆえか、性急な手が震えながらブラウスのボタンを外してゆく。二つめまでは何とか外せたが、三つめからはどうしても上手くゆかず、苛立ったシュンは前を引き裂いた。勢いでボタンがすべて弾け飛び、美海は恐怖に身体を強ばらせた。
「思ったとおりだ、何てキレイで大きいんだ」
 ブラウスは最早、半ば引き裂かれた布きれと化し、前からは黒のブラが露わになっている。
「シュンさん、止めて―」
 美海は震えながらシュンを見上げた。
 シュンの呼吸が荒くなる。怯え切っている美海は気づいていないが、シュンのズボンの前ははっきりと大きく盛り上がっていた。
「ミュウ、やっと俺のものになるんだね」
 シュンの手がブラのフロントホックを外そうとしたまさにその時、美海が突如としてウッと呻いた。
 呆気に取られたシュンが美海を押さえつけていた手を放し、拘束を解かれた美海はベッドに転がったまま、華奢な身体をエビのように折り曲げて咳いた。
「ミュウ、どうしたんだ?」
 図らずも、そのことがシュンの理性を呼び覚まし、いつもの彼らしさを取り戻させたようだ。
 美海は片手で口許を覆った。
「気分が悪いの」
「気分が悪い?」
 シュンが気遣わしげに覗き込むと、美海はコクコクと頷いた。

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