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温もり

第1章 嗚咽

 笑いながらカレーを食べ、やはり途中で食べきれなくなったニニは三分の一ほど残し、零九は自分の分を食べただけで満腹になった。

「ねぇ、零九」

「ん?」

 口の周りをティッシュで拭きながらニニは尋ねる。

「三時間もどこに行ってたの?」

 やはり聞かれた、と零九は内心の動揺を無表情に抑えこむ。相手がニニなら、尚更本当の事は言えない。

「……訓練室」

 ボソリと彼は呟く。長時間どこかにいるとするなら、そこしか思いつかなかった。

「……そうなんだ。それじゃあ、疲れて当然だよね」

 零九の予想と少し違い、彼女は非難する事も無く、どこか悲しそうに呟く様に言う。
 彼女を見ると、その間寂しさを堪えていたらしく、本当に寂しそうな顔をして、それでも零九を非難しない様に黙っていた。
 その表情に、零九は胸が締め付けられる様に痛んだ。彼女に自分がラディと性交をしてたとは口が裂けても言えない。でも、本当は彼女にウソなどつきたくはなかった。

「ごめん」

 零九は何も言い訳が思い付かず、ただ一言言って頭を下げる。彼女はそうされるとは思わず、驚いて彼に近寄る。

「どうしたの? ねぇ、本当に訓練室にいたの?」

 いつもと違う様子に、ニニは何かあったのでは無いかと心配になる。

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