
温もり
第1章 嗚咽
言い訳も嘘も思い付かず、心配そうに顔を覗き込む彼女を、零九は衝動的に抱き締める。
小柄なラディと違い、スレンダーで背の高い彼女の感触に、心の深い所から安堵する。
ずっと彼女を抱き締めていたい。時間が止まるなら、このまま動かないで欲しいとすら思う。
「零九……」
彼の手に力が篭り、少し苦しいニニだが、彼が自分を求めていると解った彼女はそろりと彼の背中に手を回す。
鍛えられ、不規則におうとつのある背中。自分には甘さすら感じる、彼の体臭。それのどれもがニニは愛おしく、自分を包んでくれる彼の大きさに、彼を失う事など考えられなかった。
「ニニ」
零九は耳元で甘く囁く。
彼女にしか向ける事が出来ない、甘い囁き。
彼女が血の繋がった妹でも、そんな事は関係なかった。産まれた時から一緒で、彼女が隣にいるのが零九にとっては当たり前の事だった。あまりに当たり前で、それがどんなに尊い事か、見える所に自らの死がある零九は解っていた。
彼女には生きていて欲しいと思う。だが、自分が死んだ後、彼女にはいまの自分が受けている事やそれ以上の事が起きるのも、彼には解っていた。
「君は一人にさせないよ」
それは零九にとって、約束ではなかった。
「俺が先に死ぬ事になったら、君を殺す。君より先に死なないから」
零九にとってそれは決意だった。近い将来に向けて覚悟を決めていた。
小柄なラディと違い、スレンダーで背の高い彼女の感触に、心の深い所から安堵する。
ずっと彼女を抱き締めていたい。時間が止まるなら、このまま動かないで欲しいとすら思う。
「零九……」
彼の手に力が篭り、少し苦しいニニだが、彼が自分を求めていると解った彼女はそろりと彼の背中に手を回す。
鍛えられ、不規則におうとつのある背中。自分には甘さすら感じる、彼の体臭。それのどれもがニニは愛おしく、自分を包んでくれる彼の大きさに、彼を失う事など考えられなかった。
「ニニ」
零九は耳元で甘く囁く。
彼女にしか向ける事が出来ない、甘い囁き。
彼女が血の繋がった妹でも、そんな事は関係なかった。産まれた時から一緒で、彼女が隣にいるのが零九にとっては当たり前の事だった。あまりに当たり前で、それがどんなに尊い事か、見える所に自らの死がある零九は解っていた。
彼女には生きていて欲しいと思う。だが、自分が死んだ後、彼女にはいまの自分が受けている事やそれ以上の事が起きるのも、彼には解っていた。
「君は一人にさせないよ」
それは零九にとって、約束ではなかった。
「俺が先に死ぬ事になったら、君を殺す。君より先に死なないから」
零九にとってそれは決意だった。近い将来に向けて覚悟を決めていた。
