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温もり

第1章 嗚咽

 良い匂いに零九が目を覚ますと、ニニがトレイに二人分の食事を乗せて運んで来たところだった。

「寝てたか?」

「あ、起こしちゃった?」

 大きなトレイに悪戦苦闘しながら部屋に入って来るニニを見て、手伝おうとは思うが、体が重くて動けない。彼女がなんとか入って来て、空いているベットにトレイごと料理を置き、零九の顔を覗き込むまで、彼は何も出来なかった。

「本当に大丈夫? 熱はない?」

 ニニは心配そうに言って額をくっつける。零九はそっと彼女の背中に手を回し、軽く口づけをする。彼女も嫌がる事もなく、その口づけに応える。

「熱はないみたい」

 少しホッとした様に笑ってニニはクスクスと笑う。
 トレイを置いたベットに座り、湯気を上げるカレーを持つ。

「食べる?」

「うん、少し食べるよ」

 言いながら零九はゆっくりと起き上がる。少し眠ったお陰か、まだ頭痛はするが先ほどよりは少し楽になった。
 ニニからカレーを受け取り、ベットの上で食べ始める。ルーの色で、ニニのは甘口、零九のは辛口だと解る。

「……キャベツ」

 一口食べたところで零九は呟く。

「キャベツ?」

「二三九、キャベツ持ってたんだ」

 先ほど話をしていた時にキャベツを一玉持っていた事を思い出していた。ニニはそれを聞いて軽く吹き出す。

「二三九、豚肉取りに行ってキャベツ持って来たってみんなに笑われてたよ」

 クスクス笑うニニにつられ、零九も少し笑う。その直前に自分と真面目な話をしていたと言うのがなんともおかしかった。

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