
温もり
第14章 十日目
その日も零九は扉を開ける音に目を覚ました。
全身の痛みに観念してしまったように、逃げる気力も、身を守ろうと言う思いもなくなっている。
「離せ! 離してくれ! 何でもするから離してくれ!」
ニニ五の声が聞こえ、零九はぼんやりと視線を向ける。そこにはラディと、彼女に髪を掴まれて引っ張られているニニ五の姿があった。
暴れるニニ五だが、彼女の力には敵わず、髪を引っ張られる痛みに結局は歩くしかない、と言う状態だ。
零九のいる檻の扉を開け、ニニ五を突き飛ばして入れる。
ああ、ラディの気に入らない事をしたんだな、と零九は悟る。彼女にとって、自分達はそれくらいの価値しかないのだ。
「ラディ! お願いだ、行かないでくれ! ラディ!」
ここにいると言うのはどういう事かを熟知しているニニ五は一縷の望みをかけて懇願し、鉄格子の向こうで笑っている彼女の手を掴む。
「何でもするって、ふふっ、気軽に言っちゃダメよ?」
彼女はクスクスと笑い、ニニ五はそれだけで顔から血の気を引かせる。助かりたいがために口にしたが、彼女に言われるとこれ以上に恐ろしい事はない。
床に寝転がったまま、その様子を見ていた零九は、彼女にとってはこんなやり取りなど茶番であり、つまりは自分にした事も全て茶番だったのだと思う。
全身の痛みに観念してしまったように、逃げる気力も、身を守ろうと言う思いもなくなっている。
「離せ! 離してくれ! 何でもするから離してくれ!」
ニニ五の声が聞こえ、零九はぼんやりと視線を向ける。そこにはラディと、彼女に髪を掴まれて引っ張られているニニ五の姿があった。
暴れるニニ五だが、彼女の力には敵わず、髪を引っ張られる痛みに結局は歩くしかない、と言う状態だ。
零九のいる檻の扉を開け、ニニ五を突き飛ばして入れる。
ああ、ラディの気に入らない事をしたんだな、と零九は悟る。彼女にとって、自分達はそれくらいの価値しかないのだ。
「ラディ! お願いだ、行かないでくれ! ラディ!」
ここにいると言うのはどういう事かを熟知しているニニ五は一縷の望みをかけて懇願し、鉄格子の向こうで笑っている彼女の手を掴む。
「何でもするって、ふふっ、気軽に言っちゃダメよ?」
彼女はクスクスと笑い、ニニ五はそれだけで顔から血の気を引かせる。助かりたいがために口にしたが、彼女に言われるとこれ以上に恐ろしい事はない。
床に寝転がったまま、その様子を見ていた零九は、彼女にとってはこんなやり取りなど茶番であり、つまりは自分にした事も全て茶番だったのだと思う。
