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温もり

第15章 十一日目

 硬く冷たい床の上で、二人はどれほど横になっていたのかわからない。
 黙っていると、漂う臭気も手伝って先日の性交渉を思い出させ、気分が悪くなるので、視線を合わせずに会話をした。
 ここに入れられたならば、惨めな死が出迎えるまで耐えるしか出来ないのは、冷静な程に理解しており、お互いになにも包み隠さずに話した。
 零九はニニとの関係も、ラディとは以前から何度もセックスを強要されていた事も、ニニが殺処分の他に研究員達の慰み者になっている事も。
 ニニ五は掃除には弱ったLLや合成獣の殺処分も含まれていた事や、その肉体をどこに捨てているかを。

「何の為の施設、なんだろう……」

 ニニ五はポツリと漏らす。零九はそれに答えられず、大きく息を吐いただけだった。

「俺らは、なんで生まれたんだろう」

 答えが無くとも、ニニ五には関係がなかった。今まで溜め込んで堪えていた物を言葉と言う形にして出したかっただけだ。同じ物を見て来た掃除係の間でも、禁句であり、考えてはいけない事だから。
 なぜなら、それは考えても無駄だから。
 ラディにとって、自分達LLは玩具でしかないのだ。彼女の心には自分達の事を思う隙間などない。

「いっそ、一緒に、一思いに殺して欲しい」

 零九はボソリと漏らす。
 自分が耐え続けてニニが開放されるなら、まだ心の何処かが救われる。
 だが、本当にそうであると信じ続けるには、あまりに過酷な状況で、あまりに曖昧な口約束で、零九は若過ぎた。

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