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温もり

第1章 嗚咽

 二三九は無表情ながら困っている様子の零九を見て、仕方ないわね、と嘆息する。

「ニニにはもう貴方しか居ないのよ。あの子、誰も受け付けないでしょ?」

「ああ」

 二三九の言葉に、零九は目を少し伏せる。彼女は本来はそんな事はない。沢山の人とワイワイ騒ぐのが好きな性質だ。だが、ラディがそれを許さないだけ。

「生きてよ。ニニのためにも。私達も貴方が死んだら哀しいんだから」

「……解ってる」

 零九は頷くが、二三九も解っていた。次は彼だと。
 それは何がどうとかではない。今までの状況と雰囲気で察しているだけだ。

「ニニを一人にはさせない」

 微笑んで言えばそれは惚気に聞こえただろう。だが、ニニには見せない暗い炎を瞳に宿して呟いた言葉は、二三九の背筋を凍らせる。

「貴方、何をするつもりなの?」

 二三九は問わずには居られなかった。
 零九は口角を上げ、でも瞳に暗い炎を宿して答える。

「ニニは一人にさせない。それだけだ」

 自虐とも自嘲とも、憎しみとも取れる表情に、二三九はハッとする。

「まさか、ニニを殺すつもりなの?」

 二三九の言葉に、零九は答えず、彼女からはずした視線が、何も言わないでくれ、と語っている。

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