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温もり

第1章 嗚咽

 プレイルームはいつもの様に騒がしい。追いかけっこにテレビゲーム、携帯ゲームにお絵かきに読書と、二十人程の子供達が各々の好きな事をしている。
 零九はそんな妹と弟達に対して今は興味も無く、長い灰色の髪を求める。

「あ! 一五零!」

 キッチンに向かおうとしていた零九は、飛び抜けて明るい声に足を止める。
 特徴的なオレンジ色の髪をポニーテールにしてひょこひょこと弾ませて走ってくる小柄な一番下の妹がいた。

「三零一……」

 零九は複雑な気持ちで呟く。
 彼女は、三零一の零一には何も罪はない。だが、彼女はラディからハッキリとした愛情を受けている。そのオレンジ色の髪も、ラディが染め、縛ったものだ。
 自分には性交を求め、三零一には愛情を与える。ラディが何を思っているのか解らない。今更、知りたいとも思わない。

 目の前まで走ってきた三零一は裏表を感じさせない満面の笑みで零九に雑誌を差し出す。

「また見つけたから買って貰ったよ!」

 ニコニコと笑っている彼女の笑みを見ながら、零九は無表情でその雑誌を受け取る。表紙に自分達の父親の写真が掲載されているのだが、三零一はそれに興味を示さず、純粋に零九とニニが喜ぶからと、街に連れて行って貰った際に探してあれば買って来てくれる。

「ありがとう」
 
 零九はポツリと呟いてニニを探しに行く。
 彼女なりに自分達に気を使ってくれているのは解る。だが零九にはラディの影が濃い彼女とはあまり接したくはなかった。

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