テキストサイズ

温もり

第2章 妹

 長い髪を洗い終えたニニは零九の入っている湯船に入る。
 二人で入る湯船もまた広く作られ、ここに姉弟七人で入っていた事を思い出してニニは表情を暗くする。

「零九」

 呼ばれた彼は視線を彼女に向け無意識にその、傷だらけでも女性らしさを失っていない肉体を見る。

「一二ってさ、お風呂嫌いだったよね」

 両膝を抱え、ニニはぽつんと呟く。高熱にうなされながら、それでも、生きろ、零九に大切にしてもらえ、と言って息を引き取った。

「入る前に騒いだな」

 零九は静かに答える。
 彼が何故風呂が嫌いだったのかは、零九は知っていた。
 それはニニと既に他界した零一がラディに強要されている『実験』だ。行為の前にシャワーなどを浴びてから行うと聞いた彼は、暗い表情で風呂に入る二人を慰める意味と、実験に反抗する意味も含めて風呂に入る事を嫌った。

「もう、二人っきりだね」

 静かな浴室にニニの声は悲しげに広がる。零九は膝を抱えた彼女に近づき、ギュッと抱き寄せた。
 直接触れる肌の安心感に、ニニは零九の背中に手を回し、胸にもたれる。

「一人にさせない」

 ニニの柔らかい胸の感触を胸部に感じ、滑らかな曲線を描く腰を撫で、引き寄せる。
 全身を密着させて、二人は見つめあってキスをする。

「私を殺して。零九」

 ニニは愛を語る様に囁く。

「うん。一人にさせないよ、ニニ」

 零九はそれに答える様に囁いた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ