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温もり

第1章 嗚咽

 女の特徴は目だ。
 彼よりも色の濃い金色の瞳の吊り目は相手に獰猛な印象を与え、気の弱い相手ならば見るだけで怯え、彼女の言いなりになってしまう。
 それ以外はふわふわした茶髪の小柄な女性だ。零九の母親と言うにはあまりに若く、二十代後半に見える。息子の零九に乱暴に鷲掴みされる乳房は平均を出る事はなく、汗をかいて快楽を貪る体も平均よりは小さい位だ。

「ねぇ、気持ち、良い?」

 荒い息、甘い喘ぎの中、女は零九に尋ねる。まるで恋人にする様にとろける様な表情で、零九は吐き気がした。

「ふっぅん! ふふっ、気持ち、良いに、決まってるわよね……?だって、こんなに硬くしてるんだもんね……?」

 女は零九の神経を逆撫で、その瞳に宿る憎しみの炎を見て愉しむ。

 女の名前はラディ=ランバート。神の従者と名乗り、彼等の父親であるラーク=ラルバートが憎いがために彼から搾り取った精液と己の卵子を結合させて子供を作り、そして殺している。
 苦しめ、悶えさせ、ゆっくりジワジワといたぶりながら何人も我が子を殺してきた。

 零九は解っていた。『次は自分だ』と。
 解っていながら零九は逃げなかった。彼には守りたい者がいた。同じ両親を持つ、命よりも大切だと思える、恋人が。

「あっ、あっ、あっ、ん、そこ、そこ良いわ……。そう、そこ!ああっ! 良いわ!」

 ラディとセックスしているのも、自分が彼女とセックスすれば、恋人を凌辱させないと言われたからだった。たった一人の大切な妹を守るためだった。

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