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温もり

第3章 殺処分

 食事中も零九とニニは他のナンバーと喋らなかった。
 いつもよりもニニの箸は遅く、零九もそれに合わせてか、遅い。

「話しかけ辛いよね」

 二人の様子が気になりつつも、話しかけられない。話しかけて嫌がられる訳ではないが、あまりにも二人で一緒にいる為、水を差す様で出来ない。
 ニニが女性だと知っているLLは少ないので、何故それほどまでに一緒に居るのか、その理由が解らない事が多い。

「そんなに周りって信用出来ない物なのかな?」

 ポツンとニニ九は呟く。殺処分と言う十字架の重みは解らないが、二人だけで抱え込める物でもないと、それだけは解っている。おそらくどちらかが先に死に、どちらかが生き残る事もLLは解っている。
 二人の今は良い。一人になった時に、残った方がそれこそ死ぬまで一人きりでいるというのは、見ているだけでも辛い物だ。

「最近、ホントに二人とも笑わないし、辛いんだろうね」

 箸をおいたニニの食事を零九がいつもの様に食べ始め、そして二人は静かに席を立つ。
 何事か話し、ニニが頷き、零九は俯く。それから、研究室から出て行った。

「……話しかけれないよね」

「……うん」

 二人は苦笑いして二人を見送った。

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