
温もり
第3章 殺処分
研究室を出た二人は、早朝故、静かな廊下を歩く。
今日も殺処分をしなくてはいけないのだから、そのためにいつでも体を動かせるようにするためだ。食後でまだ起きてから一時間ほどしか経っていないので、まだそんなに動ける状態ではない。
無意識に握った手から、温もりを感じる。
いつまで一緒に居られるか解らない。そして、その時間は残されていない。
「……死が二人を分かつまで」
「ん?」
ニニがポツリと呟いた。零九は歩きながら暗く沈んだ表情をしている彼女を見る。
「結婚する時に、そう誓うんだって」
その口調も表情と同じで、静かな廊下に反響する事も無く、どこかに吸い込まれる様に、消え入りそうな程に小さな声だ。
「健やかなる時も、病める時も、互いを支え合う事を近いますか? 死が二人を分かつまで、生涯寄り添う事を誓いますか? って、神に誓いを立てるんだって」
今にも泣きそうなほどに、震える声でニニは続ける。
「私は、誓えるよ。これから何十年だって、零九と一緒に居れる。どんな時だって、零九を支えていられる」
縋る様に零九を見上げ、ニニは必死に言う。
あまりに必死な言葉に、それは、零九を支えるというよりは、本当に縋りついているだけではないのかと、零九はそう思うが、でも、だからこそ彼女を一人にさせれない、自分が側に居てあげないと、きっと狂ってしまう。そう感じる。
「俺も、誓うよ。ニニ」
零九は囁き、泣きそうな彼女の肩を抱いた。
「だから、独りにさせない。死なんかで別れない。ずっと一緒だ」
「……うん」
目の前に立ちはだかる『死』への恐怖のためか、零九の言葉はどこか空虚で、感情の篭もっていないものに聞こえた。
今日も殺処分をしなくてはいけないのだから、そのためにいつでも体を動かせるようにするためだ。食後でまだ起きてから一時間ほどしか経っていないので、まだそんなに動ける状態ではない。
無意識に握った手から、温もりを感じる。
いつまで一緒に居られるか解らない。そして、その時間は残されていない。
「……死が二人を分かつまで」
「ん?」
ニニがポツリと呟いた。零九は歩きながら暗く沈んだ表情をしている彼女を見る。
「結婚する時に、そう誓うんだって」
その口調も表情と同じで、静かな廊下に反響する事も無く、どこかに吸い込まれる様に、消え入りそうな程に小さな声だ。
「健やかなる時も、病める時も、互いを支え合う事を近いますか? 死が二人を分かつまで、生涯寄り添う事を誓いますか? って、神に誓いを立てるんだって」
今にも泣きそうなほどに、震える声でニニは続ける。
「私は、誓えるよ。これから何十年だって、零九と一緒に居れる。どんな時だって、零九を支えていられる」
縋る様に零九を見上げ、ニニは必死に言う。
あまりに必死な言葉に、それは、零九を支えるというよりは、本当に縋りついているだけではないのかと、零九はそう思うが、でも、だからこそ彼女を一人にさせれない、自分が側に居てあげないと、きっと狂ってしまう。そう感じる。
「俺も、誓うよ。ニニ」
零九は囁き、泣きそうな彼女の肩を抱いた。
「だから、独りにさせない。死なんかで別れない。ずっと一緒だ」
「……うん」
目の前に立ちはだかる『死』への恐怖のためか、零九の言葉はどこか空虚で、感情の篭もっていないものに聞こえた。
