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温もり

第3章 殺処分

 訓練室、と名はついているが、そこには特に何も無い。部屋の隅に刀やナイフ、槍などに似せた棒が沢山ある。そこはそれだけの部屋だ。

 二人は何も言わずに、慣れた様子でそれぞれ馴染んだ物を手に取る。
 ニニは刀に似たもの。零九もそれに似てはいるが、ニニの持っているものよりも長く、無骨で、ニニが一般的な日本刀と表すなら、零九が持っているのは、大太刀や野太刀、斬馬刀と言った物になる。

 何も言わず、二人は向き合って立ち、軽く剣先を当てる。それが、開始の合図でもあった。
 腰を落として構えたと思うと、ニニは流れる様な動きで零九の真横に移動する。それはいつもの動きで、先読みしていた零九は手にした棒を振り、彼女の持っている棒を叩き落す。

「イタッ」

 少し手に当たってしまったか、ニニが小さく悲鳴を上げ、零九は動きを止める。
 ニニは右手を押さえ、痛みを堪える様にジッとしていた。

「大丈夫か?」

「大丈夫。ちょっと突っ込み過ぎちゃっただけ」

 言葉を交わしながら零九が彼女の手を見ると、まともに当たってしまったらしく、棒の形がくっきりと解る程に赤く腫れていた。骨折はしていないが、握力が戻るまで少し時間がかかるだろう。

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