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温もり

第3章 殺処分

「ニニ」

 しばらく抱き合った後、零九は呼びかける。気持ちはもっとこうしていたいとのだが、同じ態勢でいると足も手も痛くなってくる。それはニニも一緒らしく、零九を見た後に微かに笑った。

「体、解しておこう。今日もきっと……あるから」

「うん……」

 毎日の様に行われる殺処分のために二人はここに来ているのだ。発狂し、死に物狂いで襲い掛かってくる合成獣相手に、最初から本調子で動ける様にしておかなくては、命の保障などない。

 二人は傍らに置いた棒を手に取り、五メートルほど離れる。

「最初は軽く行こう。体が温まるまで」

「うん」

 零九の返事を見て、ニニは正面から突っ込む。零九も同じように真っ向から突っ込み、間合いに入ったと同時に棒を振り下ろす。
 女性、彼女、妹、そんな物など関係ないと言わんばかりに零九の斬撃は重い。ニニはまともに受ければ棒をへし折り、自分にまともに当たると知っているので、当たる瞬間に棒の角度を変え、斬撃を受け流す。
 僅かにバランスを崩した零九の顎を蹴り上げ、怯んだ隙に距離を取る。

「本当に上手いな」

 零九はニニに蹴られた顎を摩る。
 彼女の筋力はやはりどんなに鍛えても男にも、合成獣にも通じる物ではない。だから、彼女は受け流し、カウンターを狙う技術を伸ばしていた。

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