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温もり

第3章 殺処分

 カチャリ、と訓練室の扉が開かれた。

「あらら、二人とも仲がよろしい事で」

 ラディは抱き合う二人を見てクスクスと笑う。その笑みは嗜虐的で獰猛。小柄な彼女に対して恐怖を感じるのに十分な凶暴さを持っている。

「何の用だ?」

 零九はニニをギュッと抱き寄せる。彼女がこの時間にここに来る理由は解っているのだが、心のどこかでそれを否定して欲しいと言う思いから口にしている。

「殺処分に決まってるじゃない。それとも『実験』したいの?」

 二人の反応を楽しむ様にラディはそこの部分を強調して言う。腕の中でビクリとするニニを励ます様に腕に力を入れつつ、零九は自分にも言っているのだと解って動揺している。
 強要とは言え、自分から服を脱いで彼女と性行為を行った事をニニに告げられるのが恐ろしかった。

 ラディは二人のそれぞれ違う動揺の色と自分に対する思いの違いを楽しむ為に、怯える様に床に座ったまま抱き合い、見上げている子供達を見下ろす。

「ふふっ、早く準備しなさい?」

 そうしてじっくり楽しんだ後、彼女はフラリと部屋から出て行った。
 彼女が扉を閉めたのを見て、ホッとしたのかニニの目から涙が一筋零れる。

「大丈夫だ。俺が守るから」

「うん……」

 ラディから彼女を守る事など出来るはずも無く、零九に対するニニの返事は歯切れが悪い。

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