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温もり

第3章 殺処分

 二人は手を握ったまま廊下を歩き、その部屋に入っていく。
 そこは様々な武器が並んでいた。刀、弓、六角棒、ナイフ、メイス、槍、剣……。だが、その中に銃火器の類は無く、防具も無い。ましてや、魔法道具(アイテム)に属する外傷回復布も無い。

 二人は静かにいつも使う武器を手に取る。先ほど使った棒と酷似した刀と小刀。二種類だけだ。
 互いが装着し終わったのを確認し、ニニはそろりと零九の背中に手を回す。零九は彼女を受け止める様に片手で背中を摩り、額に軽くキスする。

「……行くよ」

 しがみついているニニに零九は言う。ここでモタモタしていてもラディの怒りを買うからだ。ニニは解っていながらもなかなか彼から離れられず、頷いてからも少しの間しがみついていた。

 零九から離れたニニは彼を見上げ、目を閉じる。彼女が何を求めているのか解った零九はその薄い唇に自身の唇を重ねる。だが、それだけでは満足できない。彼女の口の中に舌を入れ、舌を絡め、何度も何度もついばむ様にキスをする。

 これが現実逃避だと二人とも解っていた。目を閉じて、互いを感じられる時間が何よりも幸福で、かけがえのない、現実からの逃避であると、もうずっと前から知っていた。

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