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温もり

第3章 殺処分

 殺処分の為にされた部屋に続く扉を開けたのは零九。
 ニニの手を握り、一歩一歩踏みしめる様にその薄暗い部屋に入っていく。

 パッと部屋が明るくなる。
 だが、蛍光灯も窓も無いこの部屋の光源はない。これがラディが殺処分を楽しむ為に準備したものだと二人は言われずとも理解していた。だから、この光源が何かなどどうでも良い事だった。
 一辺が三十メートル程の正方形の、他の部屋と違い頑丈な造り。殺処分の後、綺麗に水洗いされ、消毒もされ、空調も働いているのだが、この部屋には生臭さが常に漂っている。もしかしたら、それは脳裏に焼きついた臭いで、本当はしないのかも知れないが、二人にそんな事は関係なかった。

 う……うう……。

 男性が呻く様な声が聞こえ、二人は右を見る。
 大きな観音開きの扉が口を開け、その奥に鉄格子と元は人の形をしていたと思われる物が幾つか蠢いていた。

「……」

 二人は何も言わず武器を抜く。
 その元は人の形をしていたであろう彼らは二人の殺気に気づいたか、異様に長く伸びた四本の腕と足を使って這ってくる。
 虫を思わせる動きに二人はバッと離れ、一瞬前まで二人の居た場所に彼らの吐いた唾がべチャリと着弾する。効果は解らない。だが、攻撃の意志を持った物が起こした行動だ。意味が無い訳がない。

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