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温もり

第3章 殺処分

 大きさも形も若干違うのに、彼らの顔はほぼ同じだった。
 彼らを見て零九はギリッと奥歯をかみ締める。ニニも唇を噛み、彼らを見ている。

 う、うう……。

 彼らは明るい光の中で二人を見て反応するように薄い唇を動かす。形の良い、薄い唇を。
 ジッと二人を見る瞳は金。瞼を無くしたその目からは常に涙が流れ、見開かれているのに感情が読めない。
 灰色と茶色のまだらの髪が、彼らがこの末路に追い込まれた原因だと語っている。
 抑え切れない感情が口から溢れそうで、零九は奥歯をかみ締める。刀を握る手は細かく震え、切っ先を鈍らせる。

 彼らも同じ親を持つ、兄弟。優良種LLと呼ばれず、与えられたナンバーも知らず、合成獣の材料にされこの体にされた挙句、用済みになって自分達の兄弟姉妹によって命を絶たれる。

 あ……う、うぅ……。

 彼らは二人を見て反応を示している。それは彼らがまだ正気を持っている事を示している。大きな虫のような姿にされ、言葉に出来ないだろう苦痛に苛まれても、正気を手放していなかった。言葉は恐らく最初から持っていないのだろう。誰も教えなかったのだろうから。

「ぎゃぁうあ! あう、ああ! ああ!」

 突然、一人が絶叫を上げて激痛に床を転がり、血を撒き散らす。

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