
温もり
第1章 嗚咽
丹念に体を洗い、零九はシャワールームから出る。クスクスと笑っていたラディはもうそこにいない。どうせ、またどこかに行ったのだろう、と零九は特にどうとも思わない。
疲労にベッドに腰をかけ、ため息を吐く。近くに脱いだ服があり、重い体を引きずるようにその、入院着のような簡素な服を着る。
今このベッドでも良いから眠りたい、そんな衝動に駆られながらも零九は立ち上がり、足元をふらつかせながら部屋から出て行く。眠ることよりも、早く恋人に会いたかった。母親を抱いた感触を一刻も早く忘れたくて、恋人をこの腕に抱きたかった。
まだ夕方という時間、人の行き交う研究所の中、白衣を着た研究員達は入院着の様な服を着ている灰色の髪の零九を蔑むような目でジロジロと見ている。
ラディによって生み出されたモルモット。零九を含めた全員はそういう目で見られていると彼は知っている。
『優良種LL研究室』
そう、プレートに書かれた鉄の扉を開き、零九は入っていく。研究所自体が家だと言えば家だが、この広い研究所から出た事のない彼にとって、この部屋の中が自分の家で、一時の安らぎを得る場所だった。
「あ、零九お帰りー」
扉を開けるとすぐに広間だった。
プレイルームと食堂を兼ねたこの部屋には沢山の妹と弟がそれぞれの好きな遊びをしていた。
零九は無言で頷き、部屋を軽く見渡す。長い灰色の髪を探すが、彼女はやはりここにはいないようで、彼は無表情のまま部屋に向かう。
疲労にベッドに腰をかけ、ため息を吐く。近くに脱いだ服があり、重い体を引きずるようにその、入院着のような簡素な服を着る。
今このベッドでも良いから眠りたい、そんな衝動に駆られながらも零九は立ち上がり、足元をふらつかせながら部屋から出て行く。眠ることよりも、早く恋人に会いたかった。母親を抱いた感触を一刻も早く忘れたくて、恋人をこの腕に抱きたかった。
まだ夕方という時間、人の行き交う研究所の中、白衣を着た研究員達は入院着の様な服を着ている灰色の髪の零九を蔑むような目でジロジロと見ている。
ラディによって生み出されたモルモット。零九を含めた全員はそういう目で見られていると彼は知っている。
『優良種LL研究室』
そう、プレートに書かれた鉄の扉を開き、零九は入っていく。研究所自体が家だと言えば家だが、この広い研究所から出た事のない彼にとって、この部屋の中が自分の家で、一時の安らぎを得る場所だった。
「あ、零九お帰りー」
扉を開けるとすぐに広間だった。
プレイルームと食堂を兼ねたこの部屋には沢山の妹と弟がそれぞれの好きな遊びをしていた。
零九は無言で頷き、部屋を軽く見渡す。長い灰色の髪を探すが、彼女はやはりここにはいないようで、彼は無表情のまま部屋に向かう。
